お客様とのやり取りのルールを決める重要性
私は営業からデザイナーに転職しましたので、両職の心情が理解できます。営業時代に困難だったのは、お客様とのコミュニケーションでした。大企業では営業、ディレクター、デザイナー、コーダーなど、役割がはっきりと分かれていますが、私の在籍していた中小企業では、少人数で多様な役割を兼ねていました。営業兼ディレクターやデザイナー兼コーダーというようにです。
契約を取るのは非常に大変ですが、契約後のディレクションも同様に難しいです。たとえば、一般のお客様がウェブサイトを作成する場合、ほとんどが原稿を提供できずにいます。原稿用紙を送っても、返ってくるのは1ヶ月後が普通です。
お客様に問い合わせると、「どう書けばいいか分からない」との返答が返ってきます。そういった場合、以前の会社の上司から学んだ方法で、競合他社の原稿を参考にして原稿を作成するよう指導しました。もちろん、完全なコピーは著作権の問題があるため、あくまで参考にすべきです。それでも原稿を提供できないお客様もいます。
基本的には制作に着手する前に手付金を頂きますが、作業が長引けばキャンセルされることもありますし、月々の運営費も入ってきません。そんな時はやむを得ず、私が原稿を作成することもありました。今となっては苦い思い出です。
ガテン系職種では原稿が出ないが、作成できればその後はスムーズに進む
特にガテン系、つまりブルーカラー職(建設、工事関連)の会社は、約90%の確率で原稿を提供してくれないと私の経験上言えます。これまで何社か担当しましたが、まともな原稿を受け取ったことは一度もありません。
しかし、この種の会社はデザインにあまりこだわりを持っていないことが多いです。流行りの一般的なデザインで満足することがほとんどです。原稿を作成しても、読むことを面倒がるのか、あっさりと「これでOK」と返ってくるため、原稿をこちらで作成すれば、プロジェクトを前に進めやすく、納品までも速いのが特長です。
Web制作の見積もりでディレクション料を決定する際は担当者を想定する
私の経験によれば、担当者によってディレクターやデザイナー、コーダーの作業量は大きく異なります。同じページ数のプロジェクトでも、1.5倍や2倍以上の時間がかかることもあります。特に、細かい修正を頻繁に要求する担当者は要注意です。彼らは、自分の手間を考慮せず、思いついた修正を次から次へと要求してくるため、対応が大変です。
これまでの経験から、こうした担当者は営業段階でディレクションが困難になると予測できるため、ディレクション料を高めに設定します。
一方で、やり取りがスムーズで、修正も一度にまとめてくるような理解のある担当者もいます。このような場合、私はディレクション費用を通常よりも安く設定して見積もりを出します。
つまり、見積もりを作成する際には、担当者の特性や作業スタイルをある程度想定し、それに応じた手間を考慮して料金を決定することが重要だと感じています。